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血液・免疫内科領域における個人医院の役割と病診連携について
   
従来は入院加療が中心であった血液・免疫疾患においても、新しい治療の導入により その一部の疾患では、今までのものと比べて治療成績が徐々に良くなって来ています。それらの疾患には、慢性骨髄性白血病やindolent lymphoma(増殖は遅いが再発の多いリンパ腫)などの血液疾患やHIV感染症などの免疫疾患 が含まれており、入院中心の治療に代わり外来での、慢性疾患としての長期的な維持療法が必要となってきました。一方で厚生労働省の指導により、大規模病院では診療の重点は外来から入院に移行されつつあって、そのような慢性疾患の外来での受け皿が求められています。従来勤務していた病院の近傍での、3年間 半の個人医院における診療経験を基にこれらの疾患における個人医院の役割と病診連携について述べさせていただきます。

 

1.当院における血液・免疫疾患患者の割合

当院では色々な病気の患者さんを担当していますが、割合としては血液・免疫疾患の患者さんが多くなっています。

 

内訳
 
aggressive lymphoma45人  indolent lymphoma26人  血小板減少症36

(増殖は速いが再発の     (増殖は遅いが再発の

少ないリンパ腫)         多いリンパ腫)

再生不良性貧血14人      CML5人            HIV感染症5  他

 

 

骨髄移植のお手伝い

当院では骨髄移植のお手伝いをしています。骨髄移植を行うには、白血球の型(HLA)が患者さんと合致したドナーの方の協力がどうしても必要です。先ずは患者さんの兄弟にドナーと なれる方を探しますが、確率は4人に1人で、兄弟が少なくなってきている日本ではなかなか合う人が見つかりません。患者さんの両親では、HLAが合う確率はさらに低く、20人に1人となります。そのため次に血縁関係のない第3者の方からドナーになっていただける方を探すのですが、これを骨髄移植財団の骨髄バンクに登録されている方の中から探すことになります。

登録されている方のHLAと患者さんのHLAを照合して合うことが分かれば、ドナー候補となっていただいて当院などの血液内科医のいる医療機関に来ていただきます。下の表にある「確認検査」として、ドナーとなってもらっても健康上問題ないか採血などの検査をすることと、ドナーになることによって受けるかも知れない危険性について説明した上でその意志に変わりがないかを確認します。

採血の結果などでドナーになってもらう上で健康上の問題がないことが分かれば、その次の段階として、下の表にある「最終同意」に進みます。ドナー候補の方のご両親や配偶者の方などにも同席していただいて、もう一度ドナーになることによって受けるかも知れない危険性について説明した上でその意志に変わりがないかを確認します。

年々少しずつ当院での説明件数は増えてきていますが、それでも血液内科医の数が少ないようです。舞鶴市や福知山などの遠方から時間をかけて当院まで来ていただく方 が多く、大都市圏以外にも血液内科医がおられれば有難いと思います。

 


 

Indolent lymphoma(増殖は遅いが再発の多いリンパ腫)の治療

Indolent lymphoma は適当な日本語訳がなく、私なりに「増殖は遅いが再発の多いリンパ腫」としました。より数の多い aggressive lymphoma (増殖は速いが再発の少ないリンパ腫)と比べると、一気に悪くなることは少ないのですが、治療後年数が経っても再発が多いことが特徴です。このようなリンパ腫の患者さんの再発を少しでも減らすために、再発の兆候が少しでもあればリツキサン(主にリンパ腫細胞を標的とする抗体による製剤)を中心とした治療を行っています (再発の全くない状態で行う維持療法は日本では保険適応が認められていません)。

下図の上側のグラフは症例数が少ないのですが、当院での治療成績です。下側の2つのグラフは他施設(複数施設)での成績です。下側左は生存率、下側右は寛解率です。



 

まとめ  
1.

他領域の内科(消化器や循環器)に比べると患者数は少ないですが血液・免疫内科領域の慢性疾患としての診療は確かに必要であって、大都市圏においても受け皿となる個人医院がいまだ少ないと思 います。

2.診療の対象となるのは外来での維持療法を必要とする疾患が中心で、慢性骨髄性白血病Indolent lymphoma(増殖は遅いが再発の多いリンパ腫)、 生不良性貧血、骨髄異形成症候群(低〜中間リスク群)、特発性血小板減少性紫斑病、膠原病、HIV感染症などが挙げられます。

骨髄移植のドナー候補との相談においても、対応できる医師が少ない上に、大都市圏以外では更に少なく、個人医院で出来るところがあれば増えてほしいと思います。

3.綿密な病診連携は他科以上に必要であって、今後連絡会などの充実を目指したいと考えています。
 


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